【日本茶コラム】滋賀県の近江茶とは?産地の歴史・特徴・種類を解説
滋賀県で生産されるお茶は「近江茶(おうみちゃ)」と総称され、日本最古級の茶産地としての歴史を持ちます。琵琶湖を取り囲む山々と豊かな水源に育まれた近江茶は、産地ごとに異なる個性を持ち、煎茶・かぶせ茶・碾茶・紅茶など多彩な種類が生産されています。この記事では、土山茶・朝宮茶・政所茶・北山茶それぞれの特徴と歴史を、産地別にわかりやすくご紹介します。
近江茶とは?滋賀県のお茶の概要
滋賀県の生葉収穫量は3,130トン、荒茶生産量は679トンで、これらを総称して「近江茶」と呼びます。近江茶は茶葉発祥の地のひとつとされており、比叡山麓に茶が植えられたのが始まりとも伝えられています。
琵琶湖を取り囲む山々や豊かな水源に育まれた近江の茶園では、鈴鹿山脈の麓を中心に特有の朝霧が発生しやすく、日光を適度に遮ることで茶葉の旨みが凝縮されやすい環境が整っています。お茶の栽培に適した風土の中で、伝統的な技法を用いながら香り豊かなお茶が育てられてきました。
主な産地として「朝宮茶」「土山茶」「政所茶」「北山茶」などが知られており、湖西のマキノなどにも茶畑が点在しています。産地ごとに地形・気候・栽培方法が異なり、それぞれ個性豊かな味わいを楽しめるのが近江茶の大きな魅力です。
近江茶の産地別特徴
土山茶(つちやまちゃ)/近江土山茶(甲賀市土山町)
土山茶は滋賀県最大の茶産地で、鈴鹿山麓に位置しています。風味豊かな味わいが特徴で、二煎目以降もおいしくいただけるお茶です。浅蒸し製法が主流で、かぶせ茶の名産地としても名高く、幾度となく農林水産大臣賞を受賞するなど、品評会で高い評価を得ています。
かぶせ茶は、茶園を遮光幕で覆って日光を遮りながら栽培する技法で、渋みを抑えて濃厚な甘みを引き出すのが特徴です。近年では深蒸し茶や和紅茶の生産にも取り組むなど、時代のニーズに合わせた柔軟な進化も見られます。
歴史的には、南北朝時代に常明寺の僧が京の大徳寺から茶の実を持ち帰り、栽培を始めたのが起源とされています。近世には東海道を往来する旅人に重宝され、生産を拡大させたといわれています。大規模な産地として発展したのは近代以降で、輸出用作物として栽培が奨励されたそうです。
朝宮茶(あさみやちゃ)(甲賀市信楽町)
朝宮茶は、恵まれた立地条件と古い伝統に培われた地域性を生かして生産されています。標高400〜500メートルの高地で栽培されるため、日本屈指ともいわれる「香気」の良さが最大の特徴です。煎茶・かぶせ茶・碾茶(てんちゃ)・紅茶などの生産が行われており、特に香気と味が優れていることから全国的に評価が高く、品評会で何度も受賞しています。
最澄が唐より持ち帰った茶の種子を播いたという伝承が残る、国内最古級の茶産地のひとつです。抹茶の原料となる碾茶の生産も盛んで、その技術力の高さは全国規模の品評会での実績からも伺えます。
政所茶(まんどころちゃ)(東近江市)
政所茶は、鈴鹿山脈の渓谷部・旧永源寺町政所地区に位置する山間の茶産地です。香気とのど越しの良さは他に類がないと言われており、希少性の高いお茶として知られています。
幼少の石田三成が豊臣秀吉に献上した「三献の茶」伝説の元になった茶産地とも伝えられており、生涯秀吉に愛飲されたとも伝えられています。その後も彦根藩や朝廷に献上した歴史を持ち、特に彦根藩の庇護を受けました。江戸時代〜明治時代には隆盛を極め、伊勢から多くの茶職人が出稼ぎに来たとも伝えられています。
往時の賑わいを伝える茶摘み唄には「宇治は茶所、茶は政所、娘やるは縁所…」と謡われており、その品質の高さが古くから広く認められていたことが伺えます。現在も在来種の茶樹を大切に受け継ぎ、手摘みによる伝統的な収穫を続ける農家がこの地の文化を守り続けています。
北山茶(きたやまちゃ)/日野北山茶(日野町)
北山茶は、鈴鹿山脈山麓に位置する日野町北山地区で生産されるお茶です。かぶせ茶に特色があり、無農薬栽培による付加価値や紅茶生産などで差別化を図っています。昭和40年頃に産地として発展しましたが、その後は他産地との競争などにより規模が縮小しています。
無農薬栽培へのこだわりや和紅茶生産への挑戦は、近江茶全体の多様性を広げる重要な取り組みのひとつとなっています。
琵琶湖の風土が育む近江茶の多様性
滋賀県内には、産地ごとに異なる表情を持つ茶畑が点在しています。平坦な土地が広がる甲賀市土山町では大規模な茶園が見られ、一方で信楽町朝宮のような標高の高い地域では、独特の力強い香りが育まれています。
産地の歴史と自然の恩恵が融合した近江茶は、日本茶の産地として長い歴史を持ちながら、現在も品評会での受賞実績を重ねています。煎茶・かぶせ茶・碾茶・和紅茶と幅広い種類が揃う近江茶は、日本茶の奥深さを感じさせてくれる産地のひとつです。
※上記の産地のお茶は、新緑園ではお取り扱いがございません。あくまでも産地のご紹介となります。悪しからずご了承ください。
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記事監修
日本茶専門店 新緑園 代表取締役 茶匠 黒木信吾 (茶審査技術 九段 / 全国茶品評会 農林水産大臣賞 4度受賞)
宮崎県新富町にて昭和30年創業の新緑園代表。全国茶審査技術競技大会で全国でも数少ない「九段」を取得。
- 全国茶品評会 農林水産大臣賞 4度受賞
- 国内外コンテストで多数受賞
- 日本茶普及活動にも従事
滋賀県の近江茶は、日本最古級の歴史を持つ茶産地です。土山茶・朝宮茶・政所茶・北山茶など産地ごとに異なる個性があり、煎茶・かぶせ茶・碾茶・和紅茶と幅広い種類が生産されています。品評会での受賞実績も多く、香り・旨み・のど越しそれぞれに特徴ある味わいが楽しめます。日本茶の奥深さを知りたい方にぜひ知っていただきたい産地です。
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