玉露(ぎょくろ)について



玉露(ぎょくろ)とは、日本茶の一種となります。製造法上の分類としては煎茶の一種となりますが、栽培方法に違いがあります。お茶の木ではテアニンは根で生成された後、幹を経由して葉に蓄えられます。葉のテアニンに日光があたるとカテキンに変化します。つまり、玉露の原料となる茶葉は、収穫の前(最低二週間程度)日光を遮る被覆を施されます。こうすることで、煎茶の旨味の原因とされるテアニンなどのアミノ酸が増加し、逆に渋みの原因とされるカテキン類(いわゆるタンニン)が減少していきます。また、被覆により特徴的な香り(覆い香)が生じますがこういった栽培方法は碾茶と同様であるが、すでに安土桃山時代に行われていたと言われています。
 

◆玉露の由来

ぎょくろ:「玉露」の名前は、製茶業者山本山の商品名に由来しています。天保6年(1835年)に山本山の六代山本嘉兵衛(徳翁)が、宇治郷小倉の木下家において茶葉を露のように丸く焙り、これが「玉露」の原型となりました。現在は棒状に焙っていますが、これは明治初期に製茶業者の辻利右衛門(辻利)によって完成されています。
 

◆玉露の特徴

玉露は日本の煎茶としては高級ことをさしますが、品評会等では一般的な煎茶とは別のものとして扱われています。飲用に際して、玉露の滋味と香気の特徴を活かすには、60℃程度の低温(茶葉によっては40℃前後まで温度を下げる場合もある)の湯で浸出することが重要です。玉露はその甘みが特徴であり、高温の湯で淹れてしまうと、苦味成分まで抽出してしまうことになります。

煎茶道ではこれらの性質を踏まえ、玉露の点前において、最初に湯冷ましに注ぐなどして冷ました低温の湯を用いて甘みを出し、その後に高温の湯を用いて苦味を味わう「二煎出し」を行う流派が多いです。

二煎目に中間程度の湯で渋みを出す手順を加えた「三煎出し」の点前を持つ流派も存在するが、1回の点前に必要な時間が延びる・茶葉によっては二煎目までに成分がほぼ浸出しきってしまう等の問題があるため、大規模な茶会では「二煎出し」が主流となっています。用いる急須は小ぶりな後手や宝瓶(泡瓶)が用いられることが多く、茶碗も煎茶用に比して小さい。

茶木の品種についても、煎茶をはじめとする日本茶ではヤブキタを使用するものが多いが、玉露には、アサヒ、ヤマカイ、オクミドリ、サエミドリなど、個性の強い品種が使われることが多いです。玉露の呼び名自体に特に規定があるわけではなく、特に茶飲料の「玉露入り」に配合されている茶葉は、棚を作らず化学繊維で茶の木に直接カバーを掛け、かつ被覆日数の浅いかぶせ茶に近い物である場合も多い。

 

◆玉露の栽培方法と煎茶との違い

玉露と煎茶は、製法こそ似ているものの、栽培方法に大きな違いがあります。煎茶は太陽の光をたっぷり浴びて育てられるのに対して、玉露は収穫の2〜3週間ほど前から「覆い」と呼ばれる黒いネットやよしずを使って日光を遮る「被覆栽培」が行われます。

この遮光栽培により、渋みの原因であるカテキンが生成されにくくなり、旨み成分であるテアニンが多く残るのが玉露の最大の特徴。結果として、まろやかで甘みのある味わいと、独特の「覆い香(おおいか)」と呼ばれる海苔のような香りが生まれているのです。見た目も濃く深い緑色をしており、高級茶らしい気品ある外観を備えています。

このように、光を遮る手間と時間をかけて育てられる玉露は、生産量が少なく、希少性の高いお茶として広く知られています。

 

◆玉露の正しい淹れ方と楽しみ方

玉露の魅力を最大限に引き出すには、お湯の温度がカギになります。一般的な煎茶は70〜80℃で淹れられますが、玉露は50〜60℃の低温でじっくり抽出するのがポイント。湯の温度が高すぎると、せっかくのテアニンが壊れてしまい、苦味成分が際立ってしまいます。

おすすめの手順は以下の通りです。まず、沸騰させたお湯を湯冷ましして約60℃にします。急須には3〜4gの玉露を入れ、80ml前後の湯を注ぎ、1分半から2分ほどゆっくりと蒸らすのが理想的です。こうして淹れた玉露は、ほんの一口で驚くほどの旨みと甘さを感じられる贅沢な一杯になります。

一煎目の甘さを味わった後は、二煎目・三煎目と徐々に湯温を上げていき、変化する味わいを楽しむのも醍醐味のひとつ。宝瓶(ほうひん)や小ぶりな急須で丁寧に淹れる所作そのものが、豊かなひとときをもたらしてくれることでしょう。

 

◆玉露の魅力とおすすめのシーン

玉露は「特別なお茶」として知られ、日常使いというよりはおもてなしや贈り物、ゆったりしたい時間にふさわしいお茶です。特に和菓子や干菓子との相性は抜群で、甘みが際立つ玉露と控えめな甘さの和菓子は、お互いを引き立て合います。

また、玉露は「カフェインを抑えつつリラックスしたい」という方にもおすすめ。テアニンにはリラックス効果やストレス緩和作用があるとされ、心を落ち着けたい就寝前の一杯や、休日の午後のブレイクタイムにもぴったりです。

近年は、玉露の茶葉を使った料理やスイーツなども注目されており、高級ホテルのアフタヌーンティーなどでも取り入れられる機会が増えています。日常から少し離れ、五感で味わう贅沢な一杯。新緑園の厳選した玉露で、そんな時間をぜひご自宅でも味わってみてください。


 


ちょっと一息 お茶のよもやま話


日本茶Blog

Loading...