

大分県の生葉収穫量は1,990トン、荒茶生産量は410トンとされており、九州の中では中規模程度の茶産地に位置づけられます。鹿児島県や宮崎県のような広大な平野部を持たないため、大規模な茶園は少なく、山間地や河川流域に点在する産地が中心となっています。こうした地形条件から、茶園一つひとつの規模は小さいものの、地域の自然環境を活かした個性あるお茶づくりが続けられてきました。
また、大分県では古くから釜炒り茶の文化が根付いており、蒸し製煎茶が主流となった現在でも、伝統的な製法が一部地域で受け継がれています。九州の中でも多様な茶種が混在する点は、大分県のお茶を理解するうえで欠かせない特徴といえるでしょう。生産量の多寡だけでなく、地域ごとの背景を知ることで、大分茶の位置づけがより立体的に見えてきます。
佐伯市本匠地区で生産される因尾茶(いんびちゃ)は、番匠川上流の山間地に広がる茶産地として知られています。この地域では江戸時代から釜炒り茶が主流とされ、蒸しではなく鉄釜で炒る製法が継承されてきました。釜炒り茶は、茶葉を直接加熱することで酸化を止めるため、香ばしさとすっきりした後味になるのが特徴です。
因尾地区は平地が少なく、急傾斜地に茶園が点在しているため、機械化が難しい環境でもあります。そのため、大規模生産には向かない一方で、地域の暮らしに根差したお茶づくりが続いてきました。現在も因尾茶は、大分県内でも伝統製法を伝える存在として位置づけられており、九州の釜炒り茶文化を知るうえで重要な産地の一つとされています。
中津市中津江村や豊後大野市周辺で生産される津江茶(つえちゃ)は、標高のある山間部に茶園が広がる産地です。2003年以降は「べにふうき」を主とした栽培が進められており、品種特性を活かした茶づくりが行われています。山間地特有の冷涼な気候や寒暖差は、茶葉の生育環境として一定の影響を与える要素となっています。
一方、中津市の耶馬渓地区で作られる耶馬渓茶(やばけいちゃ)も、朝霧が発生しやすい自然条件に恵まれた産地として知られています。昼夜の温度差がある環境下で育つ茶葉は、地域の風土を反映した仕上がりになるとされ、古くから地元で親しまれてきました。いずれの産地も、大規模生産ではなく、山間ならではの条件を活かした茶づくりが続けられています。
杵築市で生産される杵築茶(きつきちゃ)は、市内産の茶葉を用いた地域銘柄として知られています。法政大学の創立者が杵築出身である縁から、同市産茶葉を使用した「ほうせい茶」が学内で販売されている点も特徴の一つです。この取り組みは、産地と消費者をつなぐ事例として紹介されることがあります。
また、臼杵市野津地区で生産される野津茶は、地元に拠点を置く製茶事業者によって「吉四六の里」というブランド名で展開されています。地域名や歴史的背景を活かしたブランドづくりは、茶産地としての認知を支える要素の一つです。大分県ではこのように、各地で異なる形の取り組みが行われています。



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