

徳島県の茶文化を語る上で欠かせない存在が、全国的にも極めて珍しい発酵茶である阿波晩茶です。那賀町や上勝町を主な産地とするこのお茶は、一般的な番茶とはその製法が大きく異なります。夏に摘み取った大きな茶葉を茹でてから木桶に詰め、乳酸菌の力で数週間ほどじっくりと発酵させて作られるのが特徴的です。この独自の工程を経ることによって、他の日本茶にはない爽やかな酸味とすっきりとした後味が生まれます。
上勝町の神田地区で古くから伝わる神田茶は、阿波晩茶の中でも最高級品として古くから珍重されてきました。かつては阿波番茶と表記されることもありましたが、現在はその特殊な製法を明確に区別するため、晩茶と書くことが一般的になりつつあります。那賀町相生地域で生産される相生番茶も同様の伝統を守り続けており、地域の暮らしに深く根ざした発酵文化を今も伝え続けています。乳酸菌が醸し出す唯一無二の風味は、現代においてもその文化的な価値が高く評価されているのです。
徳島県の山間部は、急な地形と豊かな水源に恵まれた煎茶の名産地としての側面も持っています。県内最大の産地である三好市山城町では、景勝地として知られる大歩危周辺の厳しい自然環境を活かした歩危銘茶の生産が盛んです。吉野川の清流から立ち上る深い川霧が日光を適度に遮ることで、茶葉の渋みが抑えられ、旨みが凝縮される効果が得られます。この地のお茶は、どこか懐かしさを感じさせる芳醇な香りと、苦味の少ない優しい味わいが多くの愛飲家を惹きつけてきました。
一方、那賀町の相生地区で生産される相生茶は、徳島県内で最も早く収穫が行われる煎茶として広く知られています。この瑞々しい香りと繊細な味わいを守るため、通常の番茶産地と区別して相生煎茶という名称でブランド化が進められてきました。冷涼な気候の中でゆっくりと育つ茶葉は、一葉一葉に山の栄養が蓄えられており、力強い香気と深いコクを併せ持っています。険しい傾斜地で手間暇かけて育てられる徳島の煎茶は、まさに大自然の恩恵を受けた逸品と言えるでしょう。
四国山地の厳しい寒冷な気候を活かした独自の茶作りも、徳島県が誇る大切な伝統文化の一つです。海陽町の宍喰地区や那賀町の木頭地区では、冬の最も冷え込む時期に収穫を行う寒茶が、今も大切に生産されています。極寒の中で肉厚になった茶葉を蒸し、天日でじっくりと干し上げることで、カフェインやタンニンの少ないまろやかな甘みが引き出されるのが大きな特徴です。宍喰寒茶や木頭寒茶は、寒気にさらして仕上げる独特の工程を経て、地域に伝わる素朴で滋味深い味わいを体現しています。
また、木頭地区では伝統的な釜炒り茶も作られており、鉄釜で丁寧に茶葉を炒ることで生まれる香ばしい釜香を楽しめる点も魅力です。こうした厳しい冬の自然を味方につけた製法は、先人たちの知恵と工夫が詰まった、他産地には見られない貴重な財産となっています。生葉収穫量721トンという限られた規模の中に、煎茶から発酵茶、そして寒茶に至るまで多様な茶の姿が共存しているのが徳島茶の奥深さです。それぞれの産地が守り抜いてきた個性豊かな味わいは、知れば知るほど新しい発見に満ちています。
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