深蒸し茶の淹れ方|美味しく淹れるコツと基本手順を解説
深蒸し茶(ふかむしちゃ)は、通常の煎茶よりも蒸し時間を長くとることで、渋みが少なくまろやかな味わいに仕上がる日本茶です。鮮やかな深緑色と濃厚な旨味が特徴で、急須での淹れ方にちょっとしたコツを押さえるだけで、ぐっと美味しくなります。このページでは、深蒸し茶の基礎知識から、自宅で実践できる淹れ方の手順・コツまでをわかりやすくご紹介します。
深蒸し茶とは
深蒸し茶は、日本茶の製造工程における「蒸し」の時間を通常より長くとった煎茶の一種です。一般的な煎茶の蒸し時間が30秒〜40秒程度であるのに対し、深蒸し茶は60秒〜100秒程度、さらに180秒まで蒸したものは「特蒸し茶」と呼ばれています。
蒸す工程がある煎茶・かぶせ茶・蒸し製玉緑茶などに用いられる製法です。製法上は玉露にも応用できますが、蒸す工程のない釜炒り茶には深蒸し製法は使えません。
深蒸し製法が生まれた背景
静岡県の牧之原台地を中心とした地域では、日照時間が長いため茶葉が肉厚になりやすい傾向があります。従来の製茶方法では青臭さが残り、旨味の抽出も少なくなることから、深蒸し製法が採用されたとされています。山間部の本山茶や川根茶とは異なる産地特性が、この製法を生んだ背景のひとつです。
九州においても、被覆栽培した茶葉を深蒸し茶にするケースが多くあります。新緑園でも被覆栽培を行っており、渋みの少ないまろやかな深蒸し茶を製造しています。
深蒸し茶の見た目の特徴
蒸した後の処理によって粉茶状の茶葉が混ざるため、深蒸し茶は深緑色で濁って見えるのが特徴です。この濁りは欠点ではなく、旨味や成分がしっかりと溶け出しているサインです。なお、蒸し機の回転数を極端に上げて茶葉を粉砕したものを深蒸し茶として販売している場合もあるため、購入の際は製法の確認をおすすめします。
深蒸し茶の歴史
深蒸し茶の製法の確立には諸説あり、昭和30年代から40年代初頭にかけて牧之原台地一帯で改良を重ねながら製法が確立したとされています。現在、菊川市・牧之原市・掛川市・島田市が深蒸し発祥の地として名乗りをあげていますが、歴史的文献が乏しく、明確な発祥地は不明です。
深蒸し茶の淹れ方|基本の手順
ステップ1:お湯を冷ます
一度完全に沸騰させたお湯を、茶碗に八分目まで注いで冷まします。湯冷ましという茶器を使用しても構いません。目安の温度は80℃です。
ステップ2:茶葉を急須に入れ、お湯を注ぐ
適量の茶葉を急須に入れます。6人分ならティースプーン6杯くらいが目安です。湯冷ましした茶碗のお湯を急須に注ぎ、茶葉が開くのを30秒ほど静かに待ちます。
深蒸し煎茶は茶葉が細かく含有成分が溶け出しやすいため、浸出時間は短めにするのがポイントです。長く浸けすぎると渋みや苦味が出やすくなります。
ステップ3:急須の穴の位置を確認する
急須の穴の位置は注ぎ口に合わせましょう。こうすることで、深蒸し茶を注ぐ際に急須の中で良い対流が生まれるといわれています。
ステップ4:廻し注ぎで均等に注ぐ
注ぎ始めと終わりで濃さにかなり差があるため、少量ずつ茶碗に注ぎ分けて味を均等にします。A→B、B→A、A→Bと順番に注ぎ分けるこの方法を「廻し注ぎ」といいます。こうすることで、どの茶碗も同じ濃さで美味しく仕上がります。
ステップ5:最後の一滴まで注ぎ切る
最後の一滴までしっかり注ぎ切ることが重要なポイントです。急須にお湯が残っていると、深蒸し茶の成分が浸出し続け、二煎目・三煎目の美味しさが損なわれてしまいます。
二煎目・三煎目はお湯を入れたらすぐに廻し注ぎをしてください。
深蒸し茶の味わいを引き出すコツ
深蒸し茶は通常の煎茶よりも茶葉が細かく、抽出が早いという特徴があります。お湯の温度や蒸らし時間を適切に調整することが、美味しさを引き出す大切なポイントです。
- お湯の温度は80℃前後を目安にする
- 浸出時間は30秒ほどを基本とし、長くなりすぎないよう注意する
- 茶葉の量を調整することで、濃さや風味のバランスを変えられる
- 急須は目の細かい茶こし付きのものを選ぶと、細かい茶葉でも快適に注げる
深蒸し茶特有の濁った水色は、旨味成分がしっかり溶け出しているサインです。自分好みの濃さを探しながら、日々のティータイムに取り入れてみてください。
深蒸し茶をより楽しむ工夫
深蒸し茶を楽しむ際は、茶器や飲むシーンにも工夫を加えると一層味わい深くなります。小ぶりな湯呑みを使うことで、濃厚な旨味を少しずつ堪能でき、じっくり味わう時間になるでしょう。
一煎目は濃厚でまろやか、二煎目以降はすっきりとした爽やかさが顔を出します。二煎目以降はお湯の温度を少し高めにすることで、異なる風味を楽しめるのも魅力です。夏場には水出しにして冷やし茶として飲むのもおすすめで、爽快感のある一杯に仕上がります。深蒸し茶は淹れ方や楽しみ方を変えるだけで、多彩な表情を見せてくれる日本茶です。
深蒸し茶と食との相性
深蒸し茶は濃厚な旨味とまろやかさが特徴のため、食べ物との相性も幅広いです。
- 和菓子:餡子を使った団子や最中など、甘みのある和菓子との組み合わせは定番です
- 洋菓子:バターを使ったクッキーやマドレーヌともよく合い、口の中をすっきりとさせてくれます
- 食事:脂ののった魚料理や揚げ物などの後味をさっぱり整えてくれます
お茶に含まれるカテキンには消臭や抗菌の作用があるとされており、日常の健康習慣として取り入れやすい飲み物です。深蒸し茶は栄養成分がしっかり溶け出しているため、普段の食卓に取り入れると栄養面でもプラスになるとされています。
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記事監修
日本茶専門店 新緑園 代表取締役 茶匠 黒木信吾 (茶審査技術 九段 / 全国茶品評会 農林水産大臣賞 4度受賞)
宮崎県新富町にて昭和30年創業の新緑園代表。全国茶審査技術競技大会で全国でも数少ない「九段」を取得。
- 全国茶品評会 農林水産大臣賞 4度受賞
- 国内外コンテストで多数受賞
- 日本茶普及活動にも従事
深蒸し茶は蒸し時間を長くとることで渋みが少なくまろやかな味わいになる日本茶です。お湯は80℃前後、浸出時間は30秒ほどが基本で、廻し注ぎと注ぎ切りが美味しく淹れるポイントです。新緑園の深蒸し茶は被覆栽培した茶葉を使用し、深い旨味と鮮やかな緑色が特徴です。急須選びや水出しなど、淹れ方を工夫することでさらに多彩な味わいを楽しめます。
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